むがしっこ

狐のツンコ

イラスト:狐のツンコ

むがし、天間林さ広ぉい平っこあってせ、その平っこにボッカツ、ボッカツど家っこなんぼもねぇがったず。

んで、そごに白いきづねいずおんぇ。鶴ノ児平のツンコってぇせ。三本本さも三本本平のサンコっていでせ。いっつも人ばかりだましている。はあ神様さ近ぇきづねたず。

きづねぇ年とれば、尾っぱぁ二本になったり、三本にもなったりすずおんな。その白いきづね尾っぱ二本半くれぇでたず。

七戸のあるとっちゃでな、酒のみのごうけつのとっちゃいでたずおんぇ。三太ってへるとっちゃでたず。

その三太ずふとぁ、

「わぁ、野辺地さ行って、みがきニシンだの、いっぺぇ買ってくるすけぇ」ってへったず。へんだきゃ、あっぱあ、

「晩げおそく帰ってこねんだすか。晩げになれば、 鶴ノ児平のツンコにかっちゃだまされらぁ。」ってへったど。へんだきゃ

「ばがたれぁ。この三太ばだませるもんだな。きづね、へば、人ばだました事あるもんだって。きづねにだまされだってのは、はんかくせぇばがばりよ」って大きぐなって朝ま早ぐ、野辺地まで歩いて行ったずおんぇ。

ちょうどまん中あだりの坪のあだりさ来たっきゃ、はあ晩げの八時か九時ころになったず。まっくらでせ、なんもめぇねぇず。

なんだか、体がじゃわっとなるおんて、

「おがしな、酒さめだべがな。なんだが寒けしてきたおんた気ぃするなぁ」って歩いで来たっきゃ、あっちがら、白い手ぬげっこかぶったおなごんどぁ来たずおんぇ。二人だがならんで。したっきゃオイオイオイオイどねぇでらずおな。

「やっ、おめんど、なぁしてねぇでらど」って三太、おなごどさきいだず。へんだっきゃおなごんどぁ

「おやおや、三太。おめだぢのあっぱ、ごろっと死んだんだじゃ。オイオイオイ。びっきもごろっと死んだじゃ」ってなぎながらへったずおんぇ。そればきいだ三太ぁ、

「なにしに死んだのぇ、えっ、でって死んだのよ」て、まんだぁきいだど。

「なにもかもあったもんでねぇ。毒キノゴ食ったんだが、腹やんで、腹やんで、なんもかも死んだぁ。いやこら、今びっきばへできた」ってへぇるず。その死んだのでぇできたず。三太とっちゃもなも、どっと腰おろして、べっかどねまってしまったず。

あっぱにもびっきにも死なれだど思ったどごで、しょいかごもなも、ぶっとなげでまって。びっきこばでぇで、

「イヤイヤどうするもんだべ。はっからびっきにも死なれだってが。いや、こまったじゃ、オイオイオイ。二太や二太、あっぱに死なれでどやすべぇ。オイオイオイ」ってなぎながら赤んぼの名まえば、呼んでだずじゃ。

なげでまったしょいかごさ、なあに鶴ノ児平のツンコ、自分のわらし(子供)もいっぺぇへできてらもんだもの、化げらへで、みがぎにしんだの魚だの、ぐれっと食ってまったず。

オイオイねでるうじ、さすがの三太もバガっこになってしまって、死んだびっきの二太ばでぇでなあ。どごだんだがの家のそばさ行ってオイオイどねぇでらず。朝まの三時ころだが四時ころになぁ。夜ぁ明げるころ。

んだきゃ朝ま早ぐおぎだそごの家のばさまぁ、

「ふとのなぐ声する。なんだべ」ど思って外さ出だっきゃ、三太とっちゃ、どっとあぐらかいで、その家のそばの木の下にいで、ねぇでらずおんぇ。

「オイオイ」ってなぁ。

「やあ、やあ、おめ、どごのふとだぇ。何しに泣でらのぇ」って、ばさまき(聞)だっきゃ、

「オイオイ。おらのあっぱぁ、今死んで、このおらの二太も死んでオイオイ。」 ってねぇでらずおえ。たまげだ(びっくりした)

ばさま、

「だぁ死んだって。おめぇのかがぁ死んだってが。」ってきぎかえしたど。

「死んだず。へんでこれおらのびっきも死んだず。これ。」三太とっちゃ、びっきば、ばさまさめへだど。

「なにそれびっきだってがぁ、それびっきでねぇんだ。そたらのびっきでねぇんだじゃ。よぐみでみろ」 って、ばさまにへられで、「えっ」ってはじめでよぐみだど。へんだっきゃ三太とっちゃびっきだど思ってでぇでらの、丸太っこでったず。

「いゃ、いゃ、おめぇツンコにだまされだな。」ってばさまへったど。

「はいっ、さいさい、わぁへんばだまされだな。きなの朝ま、あっぱさ、あったら大ぎだ口きいでったども、たんだ、あの鶴ノ児平のツンコにだまされだ。」と 思って、「さいっ、てぇへんだ。あの魚でったべ(どうしたろう)。」って気ぃついで、けんど(道路)の方さ行って見だず。なんに、けんどにあるかごに、み がきにしんも入ってねぇば、たらだのそったらもの入ってねぇ。ぐれっとねぇず、なんも。カラッコになってらず。

あったらにだまされねぇてたんか切って行ったって、なんに、がっぱどだまされでまって、はあ、からしょいかごしょって家さバッケ、バッケど行ったずおんぇ。

家さやっとのごどで帰って来たらば

「いやいや野辺地さ泊ったのがど思ったきゃ今来たってが。ありゃっ、でったの、そのつらぁ(顔)。そったに、泣いだおんたつらしてぇ」ってあっぱへるど。

したどごで三太とっちゃ、

「いゃ、いゃ、きつねのツンコにだまされてふとばんげねぇだんだじゃぁ」ってなんもかもしゃべってみんなにわらわれだず。

十人いれば、だまされねぇふとねぇくらいのきづねでたず。このツンコぁな。

 

【対訳】

むかし、天間林に、とても広い平野があった。その平野にはポツリポツリとしか民家は建っていなかったらしい。

そこには白いきつねがいたのだそうだ。鶴ノ児平(つるのこたい=七戸町)のツンコというきつねが、三本本(現在の十和田市付近)にも三本本平のサンコというキツネがいた。いつも人を騙してばかりいたようで、それはもう神様に近い様なきつねだそうだ。

きつねは年をとると、尾が二本になったり、三本になったりするらしいのだ。その白いきつねは尾が二本半位だったそうだ。

七戸に、酒飲みでの豪傑の三太じいという男がいたんだそうだ。

その三太という人はある日、

「野辺地に行って、身欠きニシンとか食べ物を、沢山買いに行ってくるよ」と言ったそうだ。すると妻は、

「夜遅くに帰ってこない方がいいよ。夜になると、鶴ノ児平のツンコに騙されてしまうよ」と言うのだ。三太は、

「ばかやろう。この三太を騙せるはず無いだろう。

きつねなんかが、人を騙したことがあるものか。

きつねに騙されるような奴はみな、頭の悪い奴だけだよ」と、全く気にとめず、朝早く、野辺地まで歩いて行ったそうだ。

その道程のちょうど中程、坪の辺りに来ると、もう夜の八時か九時頃になってしまっていた。真っ暗だったので、何にも見えなかったそうだ。

なんだか、ゾッと寒気がして、

「おかしいな、酒が醒めたのかな。なんだが寒けがする気がする」

そのまま歩き続けると、向こうから、白い手ぬぐいを被った女達が来たそうだ。二人ほど並んでいる。すると女たちがオイオイオイオイと泣いていたそうだ。

「わぁ、あんたたち、どうして泣いているんだ?」と三太は、女達に聞いたそうだ。すると女達は、

「おやおや、三太。あなたの奥さん、急に死んでしまったよ。オイオイオイ。赤ん坊も一緒に急に死んでしまった」と泣きながら言ったという。それを聞いた三太は、

「なんで死んだんだ? おいっ、どうして死んでしまったんだよ!」と、何度も聞いたそうだ。

「こんな悲しい事あったもんじゃない。毒キノコでも食べてしまったのか、腹痛を起こして、それで死んでしまったよ。だからこうやって、赤ん坊だけでも連れてきたよ。」というのだ。

その亡骸を抱いて、三太は、どっと腰をついて、べったりと座り込んでしまったそうだ。

妻にも子にも死なれたと思い、背負っていたカゴもなにもかも放り投げ、赤ん坊を抱いて、

「これからどうしたらいいんだ。こんなにも早くに子供に先立たれるなんて。あぁ、どうしたらいいんだ、オイオイオイ。二太よ、二太、お前のお母さんはもう死んだよ、これからどうしようか。オイオイオイ」と泣きながら赤ん坊の名前を、呼んでいたそうだ。

放りだした背負いカゴの中身は、鶴ノ児平のツンコは、自分の子供達も沢山いるので、化けさせ、身欠きニシンや魚など、すべて食べられてしまったそうだ。

オイオイ泣いているうちに、さすがの三太も気がおかしくなって、死んだ赤ん坊の二太を抱いて、どこかの家の側に行ってオイオイと泣いていたそうだ。夜が明ける朝の三時頃か四時頃に。

すると朝早く起きたその家のおばあさんが、

「人の泣く声がするな。何だろう。」と思って外に出ると、三太が、どっとあぐらをかいて、その家の側の木の下で泣いていたそうだ。

「オイオイ」と。

「まぁ、まぁ、あなた、どこの誰だい? どうして泣いているんだい?」とおばあさんが聞くと、

「オイオイ。私の妻が今死んで、この息子の二太も死んで。 オイオイ」 と泣いていたそうだ。

驚いたおばあさんは、

「誰が死んだって?あなたの奥さんが死んだって言うの?」と聞き返した。

三太は、

「死んだそうだ。これを見てくれ、私の息子も死んでしまったよ。ほら。」と言って赤ん坊(の亡骸)をおばあさんに見せた。すると

「そんなものが赤ん坊だというのか、それは赤ん坊ではない。そんなもの赤ん坊ではないよ。よく見てみなさい。」 とおばあさんに言われて、「えっ」と初めてよく見てみた。

すると三太とっちゃが赤ん坊だと思って抱いていたのは、丸太だったのだ。

「いゃ、いゃ、あなたツンコに騙されたんだな。」とおばあさんが言った。

「わぁ、なんてことだ、俺は騙されていたのか。昨日の朝、妻にあんな大口をたたいたが、そうだ、あの鶴ノ児平のツンコに騙されたんだ!」そう思うと、「大 変だ!あの魚どうしたろう!」と気がついて、昨日女達に会った道の方に行ってみた。なんと、道にあったカゴには、身欠きニシンも入っていなければ、鱈など の魚なども入ってはいない。なんにも入っておらず、空っぽになっていたそうだ。

あんなにも騙されないとたんかを切って出かけていったのに、結局、すっかり騙されてしまって、からのカゴを背負って家に呆然としてと帰ったそうだ。

家にやっとの思いで帰ってくると、

「まぁまぁ、野辺地に泊ったのかと思っていたら今帰ってきたの? あら、どうしたの、その顔。そんなにも泣いたように顔を腫らして。」と妻が言うそうだ。

すると三太とっちゃは、

「いゃ、いゃ、きつねのツンコに騙されて、一晩中泣いていたんだよ」と、その夜のいきさつをみんなに話して笑われたとさ。

十人いれば、十人が騙されてしまう位のきつねだっだそうだ。このツンコは。

 

【解説】

狐が人を化かす話は日本各地にありますが、七戸の周辺は三本木原台地という火山灰台地で、昔は耕作に不向きでした。人の手の入らない原野が広がっていたの です。現在でも狐はよく見かける野生動物です。昔はさぞたくさん生息しており、身近な動物だったのでしょう。

話中の「鶴ノ児平(つるのこたい=現在の七戸町)のツンコ」の他に、「三本木平(さんぼんぎたい=現在の十和田市)のサンコ」、「長下(ながした=現在の 七戸町坪地区)のナンコ」など、伝説の化け狐がおり、それぞれにいくつかのエピソードがあるようです。

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