むがしっこ

七戸城の水神様と千曳神社

イラスト:七戸城の水神様と千曳神社

ある時せなぁ、七戸町のな、城下一万一千石にな、堀があったわげだ。

そごになぁ水神様がいだど。その神様は蛇の神様で、殿様ば守る神様でたず。ふだんはせな、すごくきれいなお姫さまで、ではって(出現して)いだず。

さぁ、こったぁ、神様も、ばげ(晩)になれば、ズルゥズルゥど、おっきいおっきい、ひとだる(一樽)だげふとくてせ、長さがずっと何十間もある大蛇になる ずおんぇ。おそろしくて、おそろしくて、そのすがだぁ、ながなが見るごとねがったず。で、殿様ば守ってたず。

ある時、水神さま、蛇になってぐるっと回ってたず。それ見で、侍だの、町の人たちぁ腰ぬがしたず。

「うぇー」

ってつらも口もなも大きぐ、あまり姿が恐ろしいものだから、「ちびぎさな、神社たででやるすけ、時々くればいいすけ、そごさ行ってろ」ってへったず。

へんで、千曳神社さ蛇の神様あるず。 

ある時、七戸がら野辺地さ行った嫁さんがあったず。おたか、おたかってへって、まるで頭いくて、きりょういくて、たまげだきれ いだ人でたず。嫁さ行ったきゃ、そのおたかずのぁ、つらさにやねんで、ひとっつもかへがねず。でもおなごぶりいいんだもの、野辺地では評判でたず。

なんぼいくても、手とり足とりちょうじゃぐさせでも、たんだおいでもそのおたかっての、むごば好ぎでねくてせ、夜中の一時が二時ごろになれば、ぐれっと野辺地がらはんたしでせ、髪どっさどかぶってせ、ろうそぐつけで、そやって、七戸さもどって来るずおんぇ。

へんば、なったにきかねぇ人でも、白い着物きて、髪ボッサどして来るどごで、いぎゃった人ぁ、へっちょぬがして、

「うぇー、ゆうれいでだぁー」

って、さぁ、大騒ぎになったずおんぇ。

さぁこんたぁある日、侍ども行ったずおんぇ。

侍ども行ったども、ずっと遠ぐがら白ぐなって来るどごで、とってもとってもおっかねくておっかねくて、そばさよれねずおんぇ。そやって、はぁ逃げだず。

さぁ、こったぁ、そごの野辺地の人んどぁな、

「何たのむ、かにたのむって途中の千曳様さたのむべし。その千曳様のおっきぃ蛇の姿ばみだら、さすがのおたかもそれごそ腰ぬがすべ、行がなぐなるごった」

さぁ、こんとぁ、酒かって一生懸命、さんしち二十一って、二十一日毎ばんげ千曳の神社さ行って、おねげぇしたずおんぇ。

だっきゃこんとぁ、ちょんどまだ願がげ二十一日めのばんげでたずじゃ。雨ジャージャー降ってなぁ、かみなりなってせ、とっても人出はって歩げねぇおんたば んげでたず。へんでも、ばんげのはぁ十二時たっきゃ、おたかがまっ白い着物きて、髪かぶって、そやって出はったずおんぇ。

さぁ、こったぁずっと野辺地こえで、ばげの一時か二時ごろになったべ。へんだっきゃその千曳の神社ば通ったころ、かみなりなって雨ジャージャーど降ってたども、神社のあだりさ、おたかきたずおんぇ。きたっきゃ蛇の千曳様ぁ、

「いぐな、すなおにもどれ。」

って、その千曳様せな、蛇になんねぇで、きれんだ女になっていで、「手とり足とりちょうじゃぐされで、ほに、そったにやってもいばってかへがねで、からやいで、おめぇどごさ行ってもわがねんだすけ、もどんだ。家一番いんだすけもどれ。」

ってへったずおんぇ。

へでも、いうごときがねで歩いでいったずおんぇ。へんだっきゃ、今度ぁ、蛇ぁおごってしまってな、

「オー。」

って、おっきだ大蛇になって、ロウオーってあげだず。ゴーってかみなりなる中、オーっておっかげできたずおんぇ。さすがのおたかも、

「ワー」

ってへったがど思ったきゃな、そのままおたか、どんとショックで死んでしまったず。神様さたでついだどごでホラ。そういう力のある神様だず。

で今度ぁある日、まだずっと年過ぎでから、七戸さ、ぼ様あってたずおんぇ。

たまけだ三味線だの歌じょんずだたって、まなぐ見えね人でったず。昔、嫁どりさ頼まれで行って、歌っこ歌ったりして、にぎやがにするしきたりあったんだ。

ある時、千曳さ頼まれで行ったずおんぇ。へんだっきゃ、たいしたいい嫁どりでにぎやがにしてきたずおんぇ。その時、こったぁそのまなぐ見えねえぼ様よ、

「今日雪降るぁ。泊まっていったらいいんだがぁ、泊まねぇんでいったらいんだがぁ。」

って迷っていだず。こったぁ夜中の一時ごろ、このくれだらだいじょうぶだど思って、そごば出はったず。

「あぁ、どもどもありがとうございました。」って酒っこもらったべし、ふるめぇのでびぎ、大っき魚だの食うのいっぺぇもらってきたずおんぇ。一人で、どっち

ゃぁどうまぢがったんだがぁ、こんたぁ雪ぁごそごそど降ってきたず。

やぁ今度ぁけんどまぢがって、山さぁへってまったずおんぇ。山さへってまれば、まなぐ見えねぇがべし、雪ってばごそごそ降って、西も東もわがんねぐなったず。

で、こったぁ歩げなぐなって、おっかなぐなったべし、ねよたぐなったずおんえ。

「よし、わぁ、これぁこうなれば死ぬ。こったにさむぐなったし、ねれば死ぬし、どうせ死ぬんだらこごでいっぱつ、好ぎだぁ歌っこでも歌って死ぬがぁ。」

さあ今度ぁ、平っこのまんながさ三味線出して歌ったず。死ねぐり最後だど思って歌ったず。へんだっきゃちょんど、まぇ(前)のあたりでごそごそど雪の音するずおんなぁ。何ぁまえぱらさいだがと思って聞いでらっきゃ、ずるずるって蛇だずおんなぁ。

こりゃぁ大っき蛇だと思ったず。汗ぁのっこらとでで、はぁ寒いのもあっつぐなったずおんぇ。

へんだきゃ今度ぁ、蛇あるいたどごで、けんどついだずおんぇ。蛇ぁこっちゃいったすけ、それさついでいげばいいなぁど思って、三味線たなって、もらったのだなって行ったず。

蛇のあどっこついで行ったきゃ、もだぇ蛇歩ぐんだもの、いいけんどになったずおんぇ。で、そごずっと行ったきゃ神社さ行ったず。神社の戸あげで中さへって いったず。神社の中だんだもの風っこもねし、腹へれば、もらってきたの食ってせぇ、神様さもあげでなぁ、

「助けられましたじゃ、やぁやぁおかげでほんとに命びろいしたじゃ。ありがでえ神様だぁ。やっぱりいい神様だ。千曳の神様だもの。」ってへったず。

んだども、二日も三日も帰らねぇんだもの村中の人ぁ、たねで(さがしに)きたずおんぇ。ずっときたっきゃ、けんどあるずもなぁ。

「こりゃなんのけんどだべ。」

村の若ものだの、そごらのとっちゃだのかっちゃだの六~七人も行ったきゃ、神社さ行がさったず。へんだっきゃ中さぼ様いだずおんぇ。

「いやぁ、よく死なねんでら、死なねんでらぁ。いやぁ、でぇってこごさきたっきゃ。」

「夜中に助けられだじゃ、ありがでぇ神様だ。千曳の神様てぇした神様だじゃ、ありがでぇもんだ。」

【対訳】

ある時、七戸町の城下一万一千石に、堀があった。そこには水神様がいたそうだ。その神様は蛇の神様で、殿様を守る神様だった。普段はすごくきれいなお姫さまの姿で出現していたそうだ。

しかし神様は夜になると、ズルゥズルゥと、大きい大きい、樽の如く太い、長さは何十間もある大蛇の姿になるそうだ。おそろしくて、おそろしくて、その姿をまじまじ見ることは出来なかったそうだ。その恐ろしさで敵から殿様を守っていた。

ある時、水神さまが蛇の姿でぐるぐると徘徊していると、それを見て、侍や、町の人は腰を抜かしたそうだ。

「うぇー」

顔は口も何もかも大きく、あまりに姿が恐ろしいものだから、「千曳(ちびき=七戸町と東北町の境界)に、神社を建ててあげるから、時々ここに来ればいいから、そこに行っていてくれ」と言ったそうだ。

そのため、千曳神社には蛇の神様がおわすそうだ。  

ある時、七戸から野辺地に嫁いだお嫁さんがいたそうだ。おたか、おたかと呼ばれ、とても頭が良く、器量の良い、驚くほどきれいな人だったそうだ。しかし嫁 に行ったとたん、そのおたかは、顔に似合わずまったく働かない。それでもその美しさで野辺地では評判だったそうだ。

どんなに褒めても、手とり足とりおたかの為に世話を焼いても、働かせずにただ暮らさせても、そのおたかは、夫が嫌いだったので、夜中の一時か二時頃になる と、だっと野辺地から裸足のまま、髪を乱し、ろうそくの明かりを持って、ひどい姿で、七戸にもどって来るのだそうだ。

すると、どんなに気の強い人でも、おたかの白い着物を着、髪がボサボサでこちらに向かってくる姿を見た人は、腰を抜かして、

「うぇー、ゆうれいでだぁー」

と、大騒ぎになったそうだ。

今度はある日、侍達が会いに行ったらしい。しかし侍とはいえ、ずっと遠くから不気味に白い影が来るものだから、とっても怖くて、側に寄ることが出来なかったそうだ。そうして、すぐさま逃げ出したそうだ。

すると、野辺地の人々は、

「あれこれ頼むより途中の千曳様に頼もう。その千曳様の大きい蛇の姿を見たら、さすがのおたかもそれこそ腰を抜かして、夜な夜な七戸に行かなくなるだろう」

早速、御神酒を捧げて一生懸命、さんしち二十一というように、二十一日毎晩千曳の神社の神社に行って、お願いしたそうだ。

そして、丁度願掛け二十一日目の夜のこと。雨がジャージャー降り、雷の鳴り響く、とても人が出掛けられるような夜ではなかった。それでも、夜の十二時になると、おたかがまっ白い着物を着て、髪を乱して、ひどい姿で飛び出したそうだ。

そして野辺地を越え、夜中の一時か二時ごろになった。途中その千曳の神社の前にさしかかると、雷がなり、雨がジャージャーと降っていたが、神社の方に、おたかが来たそうだ。すると蛇の千曳様はおたかに、

「行ってはダメだ、素直に戻りなさい」

と、そのとき千曳様は、蛇の姿にならずに、きれいな女の姿で、「手とり足とり世話を焼かれて、そんなに大事にされていても威張って、働かずに、面倒くさ がって、あなたみたいな人はどこに嫁いでも役に立たないのだから、戻るべきなのだ。今の家が一番いいのだから戻りなさい」

と言ったそうだ。

それでも、言うことを聞かずに歩いて行ったそうだ。すると今度は、蛇が怒ってしまって、

「オー」

と、大きな大蛇になって、ロウオーと声をあげた。ゴーと雷が鳴る中、オーと声をあげながら追いかけて来たそうだ。さすがのおたかも、

「ワー」

と言って驚いたと思ったら、そのままおたかは、バタリとショックで死んでしまったそうだ。神様にたてをついたから。そういう力のある神様なのだ。

今度はある日、ずっと年月がすぎてから、七戸に、ぼ様(ボサマ=盲人の音曲師)がいたそうだ。

驚くほど三味線や歌の上手な人だったが、目は見えていなかったそうだ。昔、結婚式に頼まれて出向き、歌を歌ったりして、賑やかに祝うしきたりがあった。

ある時、千曳の方で頼まれて出向いたそうだ。そこは、とても豪華な結婚式で、いっそう賑やかに祝った。その時、その目の見えないぼ様は、

「今日は雪が降るなぁ。泊まっていったらいいだろうか、泊まらないでいったらいいだろうか」

と迷っていたそうだ。そして夜中の一時頃、この位の雪なら大丈夫だと思い、その家をあとにした。

「あぁ、どうもありがとうございました」と酒や、引出物、大きい魚など食べ物を沢山貰った。

一人ではどっちにどう曲がったのか分からなくなるほど、今度は雪がごそごそと降って来た。

とうとう道を間違って、山に入ってしまったらしい。山に入ってしまうと、目も見えないし、雪はさらに猛烈に降り続ける中、西も東も分からなくなってしまったそうだ。

するといよいよ歩けなくなって、怖くなり、さらに眠くなってきたそうだ。

「こんなになってしまったら、私は死ぬな。こんなに寒くなったし、眠れば死ぬだろうし、どうせ死ぬならここで一発、好きな歌でも歌って死ぬか。」

そして、平原のの真ん中に三味線を出して歌った。必死に最期だと思って歌ったそうだ。すると丁度前のあたりでごそごそと雪の音がするそうだ。何が前にあるのかと思って音を聞いていると、ずるずると蛇が現われたそうだ。

これはなんて大きい蛇なんだと思った。汗がジワッと出て、寒かった身体が熱くなった。

すると今度は、大蛇が移動したおかげで、道が出来ていたのだ。蛇の後をついていこうと思い、三味線を持って、さらに貰った物も持って進んで行ったそうだ。

蛇の後をついていくと、重たい蛇が歩くので、広いちょうど良い道になった。さらに進むと神社に行き当たった。神社の戸を開けて中に入っていった。神社の中なので風もなく、お腹が空けば、貰ってきたものを食べ、それを神様にもお供えし、

「助けられました、やぁやぁお陰様でほんとに命拾いしました。ありがたい神様だ。やっぱりいい神様だ。千曳の神様だもの」と言ったそうだ。

しかし、二日も三日も帰って来ないので村中の人は、ぼ様をさがしに来たそうだ。しばらく探し続けると見たことのない道があった。

「これはどこへ続く道だろうか」

村の若者や、その辺の人々六~七人で行ってみると、神社に行き当たった。

すると中にぼ様がいたそうだ。

「いやぁ、よく死なずにいたなぁ、いやぁ、どうやってここに辿り着いたんだ?」

「夜中に助けられたよ、ありがたい神様だ。千曳の神様はたいした神様だよ、ありがたいものだよ。」

【解説】

千曳神社は、七戸町と東北町の境界付近にあり、数々の伝説を持っています。この神社付近から、「日本中央(ひのもとのまなか)の碑」が発見され、史学者の間で様々な議論がなされています。

ボサマとは、青森県から北東北にかけて旅をしながら音曲で生計を立てていた人々で、主に盲人の男性(女性はイタコ)でした。津軽三味線の名人とうたわれた高橋竹山も、このボサマの出身であるといわれています。

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